
≪温泉地の石段 草津≫ H290 × W200 mm / 水彩、鉛筆、紙 / 2020年
ギャラリーQuadrivium Ostium(クアドリヴィウム・オスティウム)は4月9日(木)~21日(火)の期間、「喜夛河信介のスケッチブック」展を開催中だ。
予約不要で、入館料は無料。水彩画の展示のほか、作品販売も行う。
芸術的価値が高い故人の作品を発掘・公開する展覧会

Quadrivium Ostiumでは、世に埋もれた日曜画家のプライベート作品に光を当てる新しい試みとして「個人的な居所としてのアート」シリーズをテーマに展覧会を開催している。
世の中には商業的な目的ではなく、趣味や個人的な情熱の表現として絵画を描く人が多くいる。そのような作品のほとんどは、一般に公開されることもなく世に埋もれている。
作者が亡くなれば、美術館に寄贈することもなく、処分されるか遺族の手元に置かれたままとなっているのが現状だ。

同ギャラリーではそのような故人の作品の中から芸術的価値が高いと思われる作品を発掘し、世に公開することで新たに光を当てる試みをしている。
社会にとっては新たなアーティストの発見の機会となり、遺族にとっては故人の想いや作家性の再発見の機会をもたらす。
また、商業目的や投機目的とは無縁の、そもそも他人に鑑賞されることを想定していない極めて個人的な目的で生み出されたアートを展示。芸術面において、作者の情熱と鑑賞者である他者の共感が交わる体験を通して、人間本来に由来する「アートとは何か」を改めて問いかける。
「喜夛河信介のスケッチブック」展とは

≪東京駅 丸の内≫ H200 × W290 mm / 水彩、鉛筆、紙 / 2017年
2023年11月30日(木)~12月12日(火)に開催された、シリーズの第1回展覧会「風景画家・岩﨑恒男『彼方へ』展」は200名を超える来館者を迎え、大きな反響をよんだ。
そして今回、縁がありシリーズ第2回となる「喜夛河信介のスケッチブック」展を開催中だ。

≪七ヶ浜ヨットハーバー 仙台≫ H200 × W290 mm / 水彩、鉛筆、紙 / 2016年
喜夛河信介氏は、1945年大阪に生まれ、京都大学で土木工学を学んだ後、建設省(現・国土交通省)に入省。高度経済成長の波に乗り、沖縄、タイ、愛媛、鳥取など、国内外を転々としながら、橋をつくり、道路を通し、人々の暮らしを支えるインフラの最前線に立ち続けた人物だ。
そして、仕事に邁進する傍ら、ずっと絵を描き続けてきた。退職後、スケッチは趣味の一つになり、やがて銀座や大阪の画廊で個展を開くほどになるが、最後までプロではなく日曜画家として作品を発表し続けた。
作品は橋梁、線路、建造物の大胆な構図が特長で、構造物と向き合ってきた人間が捉える風景には空間への独特にまなざしが見られる。

≪草津 天狗山スキー場≫H200 × W290 mm / 水彩、鉛筆、紙 / 2020年
各地を巡る旅人の好奇心がもたらすおおらかな画風には、漁師町の路地裏や下町の生活風景など暮らしそのものへの静かな愛着が滲んでいる。
展示している額のほとんどは、喜夛河氏が自ら木工で仕立てたもの。手造りの歪みや色むらもまた作品の一部だ。
日曜画家のプライベート作品を通して「芸術」を考える

≪太東漁港 九十九里≫H200 × W290 mm / コンテ、紙 / 2021年
同氏は2006年に大阪画廊キャナル長堀、2016年に銀座ギャラリーあづま、2017年に大阪画廊キャナル長堀、2017年に柏市柏の葉公園センター、2018年に柏市柏の葉公園センターで個展を開催。2019年に大阪画廊キャナル長堀で二人展を開催した。
2023年8月、喜夛河信介氏は78歳で旅立った。亡くなった後も自分の絵がこうして人目に触れることは想像していなかったかもしれない。
売ることも評価されることも目的としない純粋な眼差し。芸術とは何か。描くとはどういうことか。答えはおそらく、この小さなスケッチブックの中にある。(喜夛河信介氏の紹介文は、ご遺族のご協力をもとに作成された)
「喜夛河信介のスケッチブック」展を訪れてみては。
■「喜夛河信介のスケッチブック」展概要
会場:Quadrivium Ostium
住所:神奈川県鎌倉市浄明寺5-4-32
開催期間:4月9日(木)~21日(火)
営業時間:11:00~17:00
休み:4月14日(火)、15日(水)、16日(木)
公式サイト:https://quadriviumostium.com/cms
(佐藤 ひより)